「創作室の窓から」
こんにちは。少年自然の家です。
創作室の窓から良く見えるところに山柿の木が1本立っています。
今までは周りの木々に溶け込んでいて気づかなかったのですが、秋の深まりとともに葉っぱがだんだん色づいてきて初めてそこに柿の木があることに気づきました。
木漏れ日に照らされた葉っぱが風に揺れる様子は、見ていてとても心癒される思いがします。
そんなわけで今日も創作室の窓越しに柿の木を眺めていました。
いつの間にか意識は目の前の柿の木から離れて、遠い子供の頃へと向かいます。
三歳の頃に母の実家の柿の木に登っていたら枝が突然折れてまっさかさまに落ちたにもかかわらず、下にワラの束が山のように積んであったおかげで奇跡的に無傷で済んだこと。従兄と二人で巨大な柿を取って来て大喜びしていたのに、食べてみたらなんと渋柿で泣く泣く捨てる羽目になったこと。取ってきた甘柿の皮をむくのが面倒でそのままかじってみたら思いがけず美味しくて、皮ごとバリバリ食べていたら友達にあっけに取られた顔で見られたこと。山の渋柿を取ってきて一家総出で皮をむき、干し柿をたくさん作ったこと。そんなことが次から次へと浮かんでは消えてゆきました。
私はこうやって思い出にひたる時間がとても好きです。
しばらく記憶の波間を漂っていると、突然肩にかけた無線機が鳴り、一瞬で現実に引き戻されました。
ああ、そういえば今は仕事中だったんだ。
事務所に戻る前にもう一度柿の木を眺めて、実が一つもついていないことに気づきました。
きっと山の猿たちがみんな持っていったのでしょう。
あの柿は甘いのかな。たぶん渋かっただろうな。猿はどうやって食べたんだろう。それにしても、一つくらい残しといてほしかったな。
そんなことを考えながら創作室を後にしました。
【どんべえ】