初めての夜勤と素敵な朝ごはん
こんにちは。少年自然の家です。
早いもので、今月1日で私が四日市市少年自然の家にやって来てちょうど1年が経ちました。
いつも優しく励ましてくださる関係各位の皆様方、私の不手際にも笑ってお付き合いくださるお客様には心から感謝致しております。今後とも職務に精励して参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
と、いうことで先日初めて夜勤をすることになりました。
夜、自然の家にやって来て、遅番の方から申し送りを受け、すでにいらしている夜勤専門員の方と複数人体勢でお仕事が始まります。戸締りやお風呂、厨房などを見回ってから、事務仕事などをしつつお客様のお問い合わせなどに対応します。夏の繁忙期には数百人規模でのご宿泊がありますが、この日は少人数のお客様のみのご滞在で、特に何事もなく穏やかに日付が変わりました。
やがて夜もだいぶ更けてきたので仮眠を取ることになりました。
こういう時のために自然の家には立派な仮眠室が備えられていて、夜勤の人はそこを利用されているのですが、実は私、なんか普段からその部屋が怖いんです。
男子校のワンゲル部出身で少年時代から全国各地の山の中をはじめ、駅前のショーウィンドーの前や、公園の植込み、その辺の藪の中など、どんな場所でもぐっすり眠れることが特技の一つなのですが、どうもその部屋のドアを開けて中で寝る勇気が湧きませんでした。別に何もないんですけどね。普段はキャンプファイヤーの衣装とか忘れものなんかが置いてあるだけの何の変哲もない部屋なんですけど。
そんなことで、さっきまで事務仕事をしていた自分の机の椅子に座ったまま寝ることにしました。何かあっても事務所にいるのですぐに対応できます。ここなら怖くないし、なかなか良い考えだと思いました。
私は体が大きいので、まだ1年目の新米のくせに一番大きな立派な椅子をもらっています。その椅子に深々とすわり、仰向けになると想像以上に心地よく、すぐに眠りに落ちました。
どれくらい時間が経った頃でしょう。クーラーの寒さで目が覚めました。「さっぶっ!」とつぶやきながら上着を羽織り、再び眠りに落ちました。しばらくすると、背中と首が猛烈に痛み始めてまた目が覚めました。靴を脱ぎ、机に脚をのせると幾分楽になったので、またウトウトし始めました。すると今度は壁の時計の時報が鳴り、思わず飛び起きました。この時計が夜中に鳴るなんて全く知らなかった。せっかく寝入ったのにと思いながらまたウトウトしていると、さっきの背中と首の痛みがぶり返し、そこに腰の痛さまで加わってきたので、机から脚を下ろし、丸椅子を持ってきて足を載せ、だいぶ楽になったと喜びながら眠りに落ちました。と、突然「ピーッッ!!」という猛烈な音が窓のすぐ外でいくつも鳴り響き、また飛び起きました。鹿の鳴き声です。何もこんな時刻にわざわざ窓の外で集団で鳴かなくてもよかろうに、などとブツブツ言いながらまた椅子に戻りました。
そんなことが延々と続き、やがて夜が白々と明け始めました。
薄目を開けるともう決められた起床時間が迫っています。私はのそのそと椅子から降り、ため息をつきながら熱いホージ茶をすすりました。頭が痛い。首も背中も腰も痛い。何ということでしょう。
お茶を飲み終えた私は事務所を出て、ヨタヨタと開館準備に取り掛かりました。玄関のカギを開け、館内の電気をつけ、そこいらに異常がないか点検し、重い体に鞭打って玄関前を掃き清めました。
朝7時にはお客様の朝食が始まります。「夜勤っすか?」と不思議そうな顔で迎えてくれた厨房職員の方に「初めてなんです。」と力なく応え、皆さんが過不足なく朝食を受け取るのを見守り、検食のために用意された私の分を受け取り事務所に戻りました。
初めて見る自然の家の朝食。今日は「洋朝食」です。
食パン、ロールパン、ハムサラダにオムレツ、ナゲットにチーズドッグ、オニオンスープ。普段は朝からどんぶり飯をかきこんでいる私に似合わぬ実に可愛らしい朝ごはんで、なにか食べてしまうのがもったいなく、しばらく眺めてからおずおずと味わい始めました。
美味い。
寝不足でヘタッた体と心にオニオンスープが優しくしみ込んでゆきます。パンにハムサラダを挟んで食べるとキャベツのシャキシャキ感がたまりません。オムレツも、ナゲットも、チーズドッグも、小さいながらもなんと味わい深いことでしょう。
ひとくちひとくちに感動しながら朝食が終わり、そのころには疲れ切った私の体はすっかり元気になっていました。
始業時刻にやって来た他の職員の皆さんと明るく笑顔で挨拶を交わし、まるで何事もなかったように私は自宅への帰路につきました。
こうして私の初めての夜勤は幕を閉じました。
夕べからの数時間にこのようなドラマがあったとは誰も知らず、私は「次は事務所の床に段ボール敷いて寝てやる。」と固く心に誓いました。自宅に着いた私がその後夕方まで爆睡したことは言うまでもありません。
しょーもない話を長々と失礼いたしました。
皆さん、自然の家に美味しい朝食を食べに是非いらしてくださいね。
【どんべえ】