観察センターの取組・活動

当館の取り組みや活動などを紹介します。

交流・ネットワークの取り組み

湿地と渡り鳥の保全を進めるには、国際的な協力が不可欠です。習志野市はこの視点に立ち、これまで、谷津干潟のラムサール条約登録、「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ」への参加、オーストラリア・ブリスベン市との「湿地提携」などの取り組みを行っています。

習志野市・ブリスベン市の湿地提携

習志野市・ブリスベン市の湿地提携の写真

谷津干潟(登録面積40ヘクタール)とオーストラリアのモートン湾沿岸域(登録面積113,314ヘクタール)は、1993年にラムサール条約に登録されました。また、習志野市とクイーンズランド州ブリスベン市は「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ」の参加地であることから、1998年2月25日に渡り鳥の保護と湿地の保全を目的に「湿地の保全に関する協定」を締結しました。
観察センターではブリスベン市のブーンドル湿地環境センターと連携し、湿地保全の実際に携わる⼈々の間で情報交換を行い、互いの湿地を相互に交換訪問する支援を行っています。
2018年にブリスベン市との湿地交流が20周年を迎えました。習志野市では20周年の記念碑を観察センター前広場にブリスベン市の方角に向けて設置し、また、習志野市ではこれまでの交流をまとめた「習志野市&ブリスベン市湿地交流20周年記念誌」を作成・発⾏しました。

ブリスベン市とブーンドル湿地について

ブリスベン市とブーンドル湿地についての写真

ブリスベン市はシドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第3の都市です。ブリスベン川の河口に位置する港湾都市で、クイーンズランド州の州都になっています。 ブーンドル湿地(面積1,166ヘクタール)は、ブリスベン市中心街から約15キロメートル離れたモートン湾の端にあります。干潟やマングローブ、塩生植物が広がる湿地などがあり、渡り鳥にとって重要な生息地であることから1993年10月22日にラムサール条約登録湿地になり、谷津干潟と同じく「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ」の参加地にもなっています。さらに、ブーンドル湿地は開発から市⺠の保全運動によってまぬがれた経緯があることやブーンドル湿地環境センターがあり環境教育やボランティア活動を実践する施設があり⾕津⼲潟と共通する点が多くあります。

ブリスベン市とブーンドル湿地についての写真ブリスベン市とブーンドル湿地についての写真

ラムサール条約

ラムサール条約の写真

正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、1971年にイランの地方都市ラムサールにおいて締結されたことから通称「ラムサール条約」と呼ばれます。ラムサール条約がいう湿地の定義の範囲は広く、自然の湿地から人工の湿地まで含みます。浅い海、河川、沼、水田等、水(海水でも淡水でも)に関係する場所のほとんどがその対象となります。
条約の名称から、水鳥を守ることが目的と思われがちですが、これまでに締約国会議で議論を重ねた結果、水鳥のために湿地を保全するという考えに限らず、湿地が生物多様性を守る上で重要であること、その恩恵を受ける人間にとっても価値がある、という考え方から、湿地そのものを保全し、生態系の保全を前提とする「ワイズユース(wise use=賢明な利用)」が条約の目的となっています。
ワイズユースは、良好な湿地環境を次代に受け継いでいきながら、湿地の有形・無形の資源を持続的に利用・活用していくことを意味します。また、湿地保全のあり方として、第7回締約国会議の決議(VII.8)で谷津干潟の「習志野声明」が研究事例として取り上げられており、地域の人々の参加が求められています。このように、湿地保全については「賢明な利用」「市民参加」が原則とされ、その具体的な手法は各湿地にまかされています。

東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ

東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップの写真

谷津干潟を訪れる水鳥の多くが、国境を越えて渡ります。なかでもシギ・チドリ類とよばれる水鳥たちは、地球を南北にまたがる範囲で季節的な渡りをします。渡りをする水鳥のフライウェイ(渡り経路)はいくつかあり、谷津干潟はシベリア・アラスカからオーストラリア・ニュージーランドに広がるフライウェイにあります。
谷津干潟で春(4~5月)と秋(7~9月)に翼を休めるシギ・チドリ類の中には、はるか12,000キロメートル以上を旅するものがいます。このような生態をもつ水鳥を保全していくには、越冬地と繁殖地、フライウェイ上にある中継地の保全が不可欠です。1996年3月オーストラリア・ブリスベン市で開催された、第6回ラムサール条約締結国会議で推進を採択した『アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略』にもとづく「シギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」は、シギ・チドリ類のフライウェイにある重要な湿地の適切な管理を促進し、国際協力のもとに渡り鳥の保護を図ることを目的としたもので、谷津干潟は発足当初から参加しています。
このネットワークは、2006年からは「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」のもとで運営され、フライウェイ・パートナーシップ事務局は韓国にあります。

WLI(ウェットランド・リンク・インターナショナル アジア)

WLI(ウェットランド・リンク・インターナショナル アジア)の写真

Wetland Link International-Asia(WLI-Asia)は、ラムサール条約が公認する湿地センターを支援する国際的ネットワークです。谷津干潟自然観察センターは2020年2月に登録しており、アジア各地で開催されるWLI-Asia会議に参加し、アジア各国の湿地関係者と情報交換を行いました。国際的な見地からも各国の湿地の保全とワイズユース(賢明な利用)やCEPA(対話、教育、普及啓発)を進めるために情報交換する場としています。